「きっと、澄みわたる朝色よりも、」レビュー

  • 2009/07/25(土) 21:00:55

またまた久方ぶりとなる美少女ゲームレビューです。
今回のレビューはpropeller制作の「きっと、澄みわたる朝色よりも、」となります。

<シナリオ>

本作のシナリオライターは「朱門優」氏です。
氏は「めぐり、ひとひら。」発売後にキャラメルBOXを辞めた後、Lump of sugarでも「いつか、届く、あの空に。」を制作した後に退社。それから本作のブランドである「propeller」に移籍とかなり各地を転々としている印象があるライターさんですが、朱門氏は次もここにとどまっているのでしょうか?

さて、本作のシナリオですが、美少女ゲーム系としてはかなり特殊です。
シナリオルートは分岐なしで、ヒロインも実質「与神ひよ」のみです。
そのため、人によっては合わないと感じるかもしれませんが、話の質や長さは十分だと私は感じました。

それでシナリオの中身についてですが、ギャグの多い日常シーンとシリアスなシーンの落差が激しいと言えますが、話の中核を担う四君子の面々の繋がりの強さと、その絆によって各々の問題のみならず、他の問題の解決へと取り組んでいく様というのは非常に心を打たれるものがありました。

個人的には話の展開の仕方が美少女ゲームというより、ライトノベルの方が近いように見受けられました。


<グラフィック>
原画担当は「やすゆき」氏と「ヨダ」氏です。
私がやすゆき氏が原画をつとめるゲームをプレイするのは初めてですとなりますが、この方はソフトブランド「DIVA」の「冬のロンド」で原画をなされていた方だと思います。冬のロンドのイラストを見たときは特になんの感慨を抱かなかったのですが、本作「きっと、澄みわたる朝色よりも、」をプレイしたときには、動きや表情が生き生きとしていて、非常に上手なイラストレーターさんだなと感じました。

次にヨダ氏ですが、通称で「暗黒絵師」とも呼ばれるシュールなデフォルメイラストで人気を集めている方です。この方も朱門さんと同様キャラメルBOXに在籍していたため、色々なメンバーが入れ替わった現在のキャラメルBOXと比べると、「きっと、澄みわたる朝色よりも、」の方がキャラメルBOXぽい作品という印象を受けるんですよねぇ。


<総評>
シナリオ、原画とも非常にクオリティの高い作品ですが、話の構成はライトノベルに近く、一般向けで出してもかまないのでないかという印象でした。
ただ、面白いか面白くないかと聞かれたら、「徹夜で一気にプレイしてしまったほど面白いです」という答えを返します。


<推奨・非推奨>
こんな方にお奨めです。
・キャラメルBOX「めぐり、ひとひら。」をプレイ済みの方
・ライトノベルの好きな方
・うんちく、雑学が好きな方

こんな方にはお奨めできません
・ヒロインとして「夢乃蘭」「樫春告」を気に入ってしまったから
・エンディングは何通りもある方が好きだという方
・18禁ゲームとしての要素を強く求める方




「ボクの手の中の楽園」 レビュー

  • 2009/03/29(日) 23:03:09

本当に久しぶりの美少女ゲームレビューですが、本日はキャラメルBOXの新作「ボクの手の中の楽園」のレビューを行います。

・シナリオ
本作のシナリオライターは、キャラメルBOXの創設当初から書いているライター、「ほしまる」氏です。氏の作品は、世界観が十分作り込まれていて、またそれぞれのキャラクターもちゃんと背景を持って描かれているため、根強いファンも多いです。私もファンのうちの一人で、久しぶりのゲームプレイは氏のシナリオが読めるからという意味合いも強いです。

さて、本作「僕の手の中の楽園」ですが、世界観は同ブランド過去作「シャマナシャマナ」と同一の世界となっています。シャマナシャマナはファンタジー世界として、世界観、宗教観、その他文化などがしっかりと設定されていて、しかもそれが物語に厚みを持たせていることから、私が好きな作品の代表格なんですが、この「ボクの手の中の楽園」でもその風合いは受け継がれています。とはいっても、シャマナシャマナの舞台とは時間軸がかなり違うのか、それとも遠い場所の話なのかわかりませんが、シャマナシャマナの登場人物や国などが出てくることはありません。あくまで完全に新しい場所が舞台となっています。

それで、このゲームをプレイした感想ですが、「物足りない」というのが正直な感想です。
確かに面白いことは面白いです。話のテーマはぶれることなく一貫し、キャラクターも生き生きと描かれています。また物語にメリハリもあることから、時間が経つのを忘れさせられるほどのできになっています。
ですが、致命的になっているのが話のボリュームが足りていないことです。各ルートの分量としては、、
クリス = ルーツィエ < エリノア < テオ
という形になっていて、大体話の分量として満足できるのはテオ、エリノアルートで、クリス、ルーツィエルートはまるで不人気のため打ち切りになった少年漫画を読んだよう感じでした。
「あえかなる世界の終わりに」もこんな感じでしたが、ほしまる氏には一作丸ごとちゃんと長いシナリオを書くほどの体力はもうないのですかねぇ?

・グラフィック
本作のグラフィック担当は「クロサキ」氏になります。過去作としてはコンシューマー化もされた「終末少女幻想アリスマチック」があります。

おそらく氏の絵柄は好き嫌いが別れるでしょうが、動きのある絵柄が非常に上手いため、苦手と言っていた人もプレイ後には違和感がなくなったという意見を聞きます。
本作でも戦闘のシーンなどが多いため、氏のCGが非常に映えています。

ただ、気になるのが登場人物が実際のイメージより幼めに見えることです。アリスマチックを見る限り、別にキャラが幼くなければいけないというわけでないでしょうから、もうちょっと考えてくれても良かったのではないかと思います。

・音楽
本作ではシャマナシャマナと同様「ZIZZ STUDIO」が音楽を担当しています。シャマナシャマナでも雰囲気に合った音楽が世界観を盛り上げていましたが、それは本作でも同様です。
例えば「Papiliones」のinstrumentalバージョンは使われどころも秀逸なことから非常にシーンを盛り上げてくれますし、日常音楽などもやはり世界観に合っています。サントラは買いと言っても良いでしょう。

・総評
全体的に出来のレベルは高いのですが、そこここに物足りなさを感じさせる作品で、惜しいというのが私の感想です。フルプライスで買うのはお奨めしかねますが、6000円程度で買えたならば是非お奨めしたいです。





『てとてトライオン』レビュー

  • 2008/10/26(日) 23:14:41

 今回は、PULLTOP制作の美少女ゲーム『てとてトライオン』のレビューです。久しくこの手のレビューは書いていなかったような気がしますが、そこそこ余裕が出てきたんで、せっかくだからとプレイしてみました。

 発売日が8月29日なので、かなり経ってはいるんですよね。

・シナリオ
 メインシナリオライターは『椎原旬』氏と『下原正』氏です。同社原画家の『たけやまさみ』氏が原画家をなされているラインでのいつものライターさんにして、いつも前向きなストーリーを世に送り出している方々です。

 この制作ラインでの前作にあたる『PRINCESS WALTZ』ではほぼ一本道ので戦うことに力点が置かれたことから、少々微妙なプレイ感が残りましたが、本作ではほぼ全体に楽しさが詰め込まれ、実に「らしい」内容になっていたと思います。

 さて、本作の楽しさの大本にあるのは、舞台となる「獅子ヶ崎学園」という場の設定の上手さです。
 この獅子ヶ崎学園は最先端の技術を持ちながら諸事情によりシステムダウンし、完全復旧には至っていないという舞台設定です。
 一般的に物語というのは、山場において何らかの困難や問題を乗り越えていく姿を見せるというのがもので、美少女ゲームで良く用意される山場というのは、
1.主人公とヒロインのすれ違いが発生する
2.主人公とヒロインが別れなければならなくなる
3.主人公やヒロインの過去の心の傷やトラウマが再び表に出てくる
の3パターンが常套です。
 しかし、これらの展開はその場に入ると実に鬱々としてもので、いわゆる「泣きゲー」としては良いのですが、明るい雰囲気があふれるゲームでこれをやると、ストーリーの山場というより「谷間」になりかねない危険性がつきまといます。

 その点、この「てとてトライオン」では発生する問題は大体この獅子ヶ崎学園のトラブルに因るもので、その解決を仲間と力合わせ行っていくというものなので、自然と鬱々としたストーリー展開は少なめとなります(まぁ、皆無ではありませんが)。
 
 鬱々としたストーリーに飽き飽きの方には是非おすすめです。


・グラフィック
 前述の通り、原画家は『たけやまさみ』氏です。上手な原画家さんはたくさんいらっしゃいますが、動きのある絵を描かせたら氏の右に出るものはそうはいないでしょう。また、動きだけでなく喜怒哀楽を含んだ表情の描写も一流で、「この絵、ちょっと崩れてね?」といったものも皆無ですから、グラフィックについて文句のつけようはありません。

 また、今回はSD原画には、ケモノとSD描かせたら一流の『いくたたかのん』氏が担当なさっています。確かPULLTOPでのお仕事は『お願いお星様』以来となるでしょうが、このたけやまさみ氏の絵と併せて非常にメリハリのついた演出がなされています。

 まぁ、相も変わらず、PULLTOP制作ゲームでグラフィックに対するケチはつけようがありませんね。

・システム、その他
 本作で特徴的なのは選択肢の少なさです。
 選択肢が発生するシーンは共通シナリオで2シーン。しかも、選択肢は2つだけなので、2×2でヒロインの数の分だけと非常に潔い構成となっています。
 これをゲームとしてどうかと見るかは意見の分かれるところですが、少なくとも攻略サイトいらずではあります。

 また、特筆すべきバグもなく、システム的に必要な機能はすべて整っていることからこの点からの文句は出ないでしょう。

・推奨、非推奨
こんな方にお奨め
・鬱要素の少ない明るい話を求めている方
・キャラクター同士のつながりを感じさせる話を求めている方
・短すぎでもなく長すぎでもない適度な長さの話を求めている方

こんな方にはお奨めできません
・躁鬱の激しいストーリーをお求めの方
・大作ゲーム志向の方
・魅力的なヒロインが出てきたら、専用のストーリーが用意されていないと我慢ならない方




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