100円書籍電子化サービス『BOOKSCAN』は潰されるか?

  • 2010/04/24(土) 12:13:23

一部で話題となっている、書籍読取代行サービス「BOOKSCAN」というサービスが近年立ち上がりました。

・BOOKSCAN
http://www.bookscan.co.jp

1冊100円という低価格にて、書籍をpdf化してくれるこのサービス。
書籍が本棚から溢れかえり、それでもなお捨てられないという読書家は多く、また、kindleやiPadなどの電子書籍リーダーが注目を集めている現在、電子媒体化された書籍の需要は今まで以上に高まっています。

しかし、このBOOKSCAN。これって違法じゃないのという声があちこちで見受けられます。

■現在では間違いなく違法
なぜ違法かというと、著作権法第三十条にて、私的使用による複製は使用者が行わなければならないと定められているからです。
雑誌を読者の代わりに購入し、電子化してブラウザから見られるようにしたサービス「コルシカ」も、この第三十条に引っかかって潰れたという経緯があります。
この辺りの経緯を、BOOKSCAN側も認識しているようで、サイト内で以下のように記述しています。


1.現行の法律のままですと、ご自分でスキャンするのはOKですが、第三者に依頼することはNGだそうです。

(中略)

自分でスキャンするのは、OKだけど、業者に依頼するとNGというのは、今の時代にあっていないと思います。
私的複製の範囲拡大に関する法改正は、国会議員 ツイッター一覧などで働きかけお願い致します。


著作権についてご一読下さい(BOOKSCAN)


BOOKSCAN側としては、依頼者側が、著作権保有者に許可を取った上で申し込みがなされているという形になっています。
しかし、この理屈が通るかというと微妙です。著作権保有者の許可を証明する書類の提出を義務付けていない以上、依頼者側に責任をなすりつけるにも限度がありますし、おそらく訴えられた時点でサービス終了という形になるのではないでしょうか。

■問題は「潰すに値するか」
ここで一点考えておきたいのが、BOOKSCANが違法かどうかという問題点とは別に、BOOKSCANが実際に訴えられるか否かという点です。

法的にグレーだとか、限りなくブラックに近いと言われる問題は、訴えられない限り白黒がつくことはありません。
つまり、巷で違法だなんだのと言われたとしても、どこかの誰かが裁判を起こしたり、差止請求を行ったりしない限り、事業が止められることはないのです。
そこで、訴えを起こすの誰かというと、もちろん出版社及びその協会でしょう。出版社らがBOOKSCANを訴えるというアクションを起こさない限り、BOOKSCANは永遠にグレーなサービスのままです。

ここで考えたいのが、出版社らがBOOKSCANを放置すると、どのようなデメリットがあるのかということです。デメリットを大きければ、実際に訴えを起こすと考えられます。

?P2Pに流される懸念
出版社側にとっての一番の懸念材料はこれでしょう。
デジタル媒体での販売が主であるが音楽や映像と比べて、アナログ媒体である書籍は、取り込みに手間がかかる分、P2Pなどで違法に共有されるリスクが少ないという面があります。しかし、BOOKSCANのサービスはたかだか1冊100円程度ですから、ネット上でいわゆる「神」と崇め奉られるために、このサービスを利用してP2Pに書籍を流す人が出てくることも考えられます。
ただ、BOOKSCANは、自己のサービスを低価格・低品質と宣伝しているため、P2Pなどに流す人が満足する程の品質でなければ、流出は起こらないと考えられます。

?デジタル版を買ってもらえなくなる懸念
もし出版社側が、既に紙媒体として販売している書籍を、同時に電子版も買ってもらおうというビジネスプランをもっている場合、BOOKSCANのサービスが邪魔になってくるという可能性が考えられます。
話は新聞になりますが、日経新聞電子版の場合、紙&電子版の販売と、紙のみの販売の差額は1000円となります。もし、100円で紙を電子化されるサービスが他にあった場合、目障りで仕方がなくなるでしょう。
BOOKSCANの場合は新聞は取り込み対象としていませんし、出版社側も電子版の販売は模索状態のようなので、明確な競合関係にあるとは言い切れないところでありますが。

以上2つくらいでしょうか。他になにかありましたら、コメント欄にでもお願いします。


このように考えてみると、すぐさま、わざわざ訴える必要あるとは考えられませんね。しばらくは静観されると思われます。
後は、どの程度BOOKSCANのサービス規模が大きくなるにもよって対応が異なるでしょう。少ないユーザー向けにニッチなサービスをちまちまやっている分には良いでしょうが、もし目障りなほど大きくなり、多くの顧客を生み出すのであれば、さっさと潰して自分たちで代替サービスの立ち上げを行うかもしれません。
BOOKSCAN側もその辺りを考えて、サービスの規模を絞っている節も見受けれれますが、これからの流れがどうなるかというのは、非常に気になるところではあります。

なぜIPサイマルラジオ『radiko』は一部地域でしか聴くことが出来ないのか?

  • 2010/04/17(土) 23:10:58

今年3月15日に試験開始されたIPサイマルラジオサービス「radiko」
ラジオ放送をインターネットで聞けるサービスということで、この1ヶ月の間に非公式アプリが次々と作られたりと予想外の人気を博していますが、最大の問題点が東京都のまわりと大阪府の周りでしか使用することが出来ないことです。

それで、この話を他の人にすると、「なんで特定地域でしか使えないの?」という顔をされることがなんどかあったので、理由について調べてみました。

■地域制限は地方局を配慮してのこと
まず、日経ビジネスオンラインによると、以下のように述べられています。

 パソコン向けでも聴取可能地域は当初、在京局は首都圏の1都3県に、在阪局は大阪府に限定される。この制限は、存在意義を問われかねない地方系列局の反発を阻止する狙いもある。協議会は、順次、地方局にも参加を呼びかけ、各局の放送エリアに限定して、ネットの同時送信を実現してもらう方向で考えているようだ。

(一部抜粋)

大手民放ラジオ13社、ネット同時放送解禁へ(日経ビジネスオンライン)


ここで、なぜ地方系系列局が「存在意義を問われかねない」かというと、おそらく系列局がキー局からコンテンツを購入しているからです。
もし、キー局がIPサイマル放送で無制限に放送されてしまった場合、視聴者がそちらに流れてしまい、系列局の利益は激減してしまいます。そういう意味での「存在意義を問われかねない」という話でしょう。
キー局としても系列局を潰すわけにはいきませんし、radikoが配信地域を限定しているのは、このような原因によるものだと思います。

■コンテンツを持っている局にはチャンスも
上記のような理由から現在放送地域が限られていますが、系列局がコンテンツを買ってばかりという前提に基づくもので、独自にコンテンツを持っていれば全国に流すということは逆にチャンスになるはずです。今のところ地方の独立系局は独自のコンテンツを多く持っているという話ですし、このような局はradikoに全国に流したいという形で乗り込んでくるかもしれません。

例えば今のところ流しているCMは地域に根ざしたものとなっていますが、radikoに流すときだけ全国共通に影響のあるCMを流せば、収益の増加も考えられます。

2004年にインターネットの広告費がラジオの広告費を抜いて以来、ラジオの収入はジリ貧を迎えています。しかし、災害時の情報提供などといったラジオの社会的意義というのは未だなくなったというわけではないでしょう。
企業が存続と成長を続けるためには絶えず改革をする必要があり、今回のradikoはその一因と成り得ます。

どうか、ラジオ各局は積極的な参画を進めてくれることを強く望みます。まぁ、まずはスマートフォンへの対応でしょうかね。iPhoneアプリでは今のことろwi-fiからしか繋げませんが、おそらく接続基地局の位置などから受信地域を特定するのはそう難しいことではないでしょうから。

日経電子版の愚「紙媒体から3万人以上乗り換えられないように!」

  • 2010/04/11(日) 09:01:58

さて、先週の記事にて、日経新聞電子版の使い心地についてレビューし、これからに期待とのことで締めたわけですが、日本経済新聞社の姿勢を考えるに、少々厳しいのではないかという感じがしました。

■読者を増やすことを考えてない?
上記のように考えた理由の1つが、現代ビジネスの「経済の死角」という記事です。この記事にて、日経新聞社の社員の言葉が載せられています。

 日経の若手記者は語る。

「Web刊単独の値段を4000円と高めに設定したのは、紙と併読してもらうのが基本という考えからですが、日経ブランドを過信しているように思います。
実際、社内では5月の有料稼働時に紙の部数がどれくらい減るか、神経質になっています。もし紙のほうがいまより3万部減れば、収支的に電子版を創刊した意味がなくなるらしいです」


(一部抜粋)

これは終わりの始まりか 日経「電子版」創刊に固唾を呑む新聞業界ふらつく新聞社、壊れ始めたテレビ局 生き残れるのは読売とNHKだけ vol.1(現代ビジネス)


今まで私は、この電子版の創刊理由を、新聞媒体へのアクセシビリティとユーザービリティを向上させ、読者数を増やすことと考えていましたが、どうやら違うようです。日経新聞社としては、紙媒体の読者数をなるべく減らさずに、売上を向上させたいという方針だったようです。

■自社内で牽制しあっても未来はなし
私が日経新聞電子版を使っていて、妙に使いにくいなぁと思っていたのは、この辺りが原因のような気もします。つまり、あまり便利になりすぎて、紙媒体の利用者が減ると困るという思いが生じてしまい、アクセシビリティやユーザービリティの向上に踏みきれていないのではないでしょうか。
この辺りは、グループ内で牽制しあっているうちにiPodにシェアを奪われたソニーを思い起こします。

例え紙媒体の読者がWeb版の有料会員として流れたとしても、その分印刷や配送コストを合理化すれば利益は向上すると思われます。しかし、日経新聞社はそこまで思い切ることが出来ないのではないでしょうか。

現代ビジネスの記事を見る限り、日経新聞社の想定する未来は、紙媒体+ウェブで月額単価1000円プラスということでしょうが、これでは減少傾向にある新聞の売上をカバーしきれるかというと厳しいと思われます。もし、この先、生きのこる気があるならば、思い切った改革が必要なのではないでしょうか。
新聞社の本義は信頼性の高い情報の提供であって、紙を配送し売ることではないのですから。

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